2008年6月 1日 (日)

「7日だけのローリー」

書店員のころの先輩にスイカのペンギンが嫌いな先輩・Tさんがいました。その人はおおかたのいわゆる癒し系やキャラ系の本が嫌いな硬派タイプな書店員。そんなTさんが、ある日「いぬのえいが」原作「ねえ、マリモ」を手にして「これいい本だよね」と言い出して、店の面陳コーナーに並べていたので仰天したことがあります。それはスイカのペンギンと同じイラストレーターなのに!

最近やっと先輩の気持ちがわかるようになりました。Tさんチワワ飼ってたもんね…。

そして私もついに犬絵本を購入。

迷い犬を飼い主が見つかるまでのあいだ預かる家族の話。シンプルな話ながら、最初は不安げな顔をローリーがだんだんと笑顔を見せるようになる過程は犬飼い人にはグッとくるものがあります。犬を連れて散歩しているときの男の子の得意げな表情もたまりません。片山健は幸福そうな表情のバリエーションがすばらしく豊富で大好きです。お話はたわいないんですけどね。

ところで、男の子はこの犬をローリーと名付けるのですが、どう見てもこいつにふさわしい名前はゴン太です。

Rori

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2008年5月13日 (火)

ネットで見つけた怖い話

正確には「怖い話」という言葉とは相容れないんだけど。

ネサフしていたらうっかりセメント樽の中の手紙を読んでしまった。

なつかしの私のトラウマ小説。5年前に読んで、心臓に氷をぶつけられたようなショックを受けたというのにすっかり忘れていた。

今回うっかりひょろっと読んでかつて読んだ瞬間と同じような衝撃を受けた。半死半生。ぐうぜん通りかかった人が私と同じようにショックを受けるといいと思ってここに貼っておく。

しかしこんな話を忘れているなんて記憶の劣化が著しい…。中学生のころだったら忘れないと思うのに…。

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2008年5月11日 (日)

手塚治虫文化賞特別賞

手塚治虫文化賞特別賞は大阪府立国際児童文学館ってやったあああ。

藤本さん(推薦人)ありがとうございます~。

文化賞、もやしもんの大賞にちょっとびっくり。海街がもらうと思ってた。アニメがヒットした時も思ったけど、もやしもんにはメジャーになる力があるんですね。アニメは、普段マンガもアニメも対して興味がないような、20~30代女性がけっこう見ていた印象があります。友人の書店員とか「帰ってきてからもやしもん見ると癒されるよ~、菌かわいいよ~」って話していてちょっと意外だった。私は菌がかわいいと思ったことないんですよね…。

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一箱古本市買い物報告

それにしても毎年参加されるみなさまの箱が多種多様、創意工夫に富んだものになっていて驚かれます。

一日目は結局ほかに古書ほうろう、往来堂書店前、Gallery Jin+Classicoの3カ所しか回れませんでしたが、それぞれ凝った箱作りでした。POP看板は当たり前。短冊手作り、プレゼント用のしおりも手作り、お客さんに渡すおまけを作ってらっしゃるお店もたくさんあってものすごく刺激になりました。

特に、隣の隣に出箱されていたblue beat booksさんがくばっていらした猫の写真がプリントされた小物がステキだった。隣は柏舎さんで買った時にいただいたしおり。

Omake (きちんとパッケージングされているところがまた…)

買い物は同人誌の麻雀マンガコラム集や、BL小説、あと悪童日記の続きなどなど。買うかどうかに迷ったときにうっかり店主の方と話すとまずい。つい買っちゃう。そんなに読まないのになあ…。

二日目。

冷雨に気後れしながらも、出発。

ほうろうから回るけど人が少ない!ちょうど、いったん大人しくなったかに見えた雨がまた降り始めてきた時で、店主さんビニールで本を隠すのに大あわて。箱に持参本のリストを貼ってらっしゃる方がいらしてナルホド。私は絶対やらないけど、SFとか市場が確立されているような本の場合はあると便利なのかも。

続いてファーブル昆虫館。ほうろうからだと道がとってもわかりづらい。途中で見かけた一箱のチラシを持った方々のあとをつけて到着。このファーブル昆虫館という施設がとても面白い場所でした。ひさびさに目にした昆虫標本にドキドキした。動物標本はそれこそ魂の抜け殻っぽくてパサパサしていて痛々しいけれど、昆虫標本はなんだかエロティクス。

旧安田邸。安田邸は地面にビニールシートを敷いて、軒の下での営業で寒そうな印象でした。嫌記箱の塩山芳明さんから2冊買ったら雨で売上苦戦しているらしく、心のそこからの「ありがとうございます」を言われました。おかげで「書評のメルマガの版元様の御殿拝見楽しみに読んでます」って言いそびれた。

映画保存協会。公園の奥まった場所にある小屋の中が会場。中が薄暗い照明がともっている不思議な空間でした。こちらでは野宿野郎さんの箱がダントツ面白かったです。HPの紹介文からして「人生をより低迷させる旅コミ誌「野宿野郎」を紹介するページです。」ってそりゃ面白くないわけがない。ミニコミ以外では野宿中に拾ったお金持ちになれそうな本を売ってらっしゃいました。野宿野郎の編集長は可愛くて生気にあふれた私と同世代の女の子でした。びっくりした。なんだそりゃ。ほかに「時代劇マンガ特選」を手に取り、見ては箱に戻しを3分くらい繰り返していたら500円を300円に値引きしてくださいました。貧乏ですみません。ありがとうございます。

坂を下りて往来堂書店。そろそろ晴れてきたころで人だかりが出来ていました。人が多すぎて…箱がよく見えない…。いい本がいっぱいあった気がしますが買いそびれた…。

オヨヨ書林前。集中レジ方式だとあまり個々のお店という感じで本を見ることが出来ない感じですが、一箱すごくいい本ばかり格安で売られているところがあってびっくりしました。山形浩生の新教養主義宣言(文庫)を80円くらいで購入。

根津教会。雨をのがれるため、クラフト芳房さんの箱が全て根津教会に移動。10箱が中に並ぶと荘厳な感じ。旅浪書房さんの箱が個性的で面白かった。POPの内容も面白かったんだけど、封筒に本を積めてなにが入っているかは開けてからのお楽しみにしてあるところとか。準備大変だったろうなあ…。

ギャラリーKINGYO。おひさま堂さんが福音館のこどものともシリーズをぎっしり揃えていました。べたべた触って結局2冊しか買いませんでしたが…。だっていいヤツバッチリ高いんだもん。

というわけで今回初めて全大家さんを回ることが出来ました。雨がひどかったので、せめて買いにきた人間がきちんとお金をおとしていこうと思ったら、買いすぎてしまいました。読まないのに…そんなに。

箱全体を見て思ったのですが、けっこういろんな箱で「あ…この本あそこにもあったなあ…」「うちにもあるなあ…」と思うことがあって、本好きの嗜好はやはり似通うものなのだと言うことを実感しました。杉浦日向子とか永江朗とか毎度のように見かけます。

そんなさまざまな箱を見たあとで、古本屋の店頭を見ると、やっぱりプロは見たこともない本を持ってきたり、拾い出したりする力があるんだなと実感しました。

見るだけの参加ははじめてだったけど、いろいろ発見があって面白かった!両日開催はいいですね。

帰りに谷中のうどん屋よったらおっちゃんが延々と自慢話をしてくれました。私の次に入ったカップルがねらい打ちで話しかけられていてこれ幸いと反応を観察してました。おっちゃんの無邪気さがほほえましい。自分がねらい打ちされたら絶対イヤだけど。

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2008年5月10日 (土)

2008年一箱古本市参加記録

というわけで参加してきました。一箱古本市

以前の記事に書いたように今回参加の最大の目的だった同人誌の発行には至りませんでしたので、せめてものなぐさめに帯つくってしこしこコメント書いてみました。

こんな感じ。

Obikome_2                                              

実は一昨年の一箱の際にもこんなのを作って入れておいたんだけど、  

2006tanzaku_2                                             

こんな感じにしていたらぜんっぜん見て頂けなかったので、今回は過剰な自己主張を試みました。 

2006tanzakum_3

往生際悪くアニメ放送中に作られたカイジメモ帳を短冊に使用。

2008tanzaku_2 2008tanzakuura_2

ちなみに、この短冊に突っ込んでくれたのはお一人、杉浦さやかの「えほんとさんぽ」を買ってくださった女性でした。                                         

ところで、今回のコンセプトは「マンガと児童書」でした。マンガは、マンガ家が表紙を描いている本も含めてのゆるめの選書。青い鳥文庫やフォア文庫をがしがし積めていたら外の雨に急に不安をあおられました。

この雨がこのまま続いたら通りすがりの人や、「ちょっとよってみよう」という気分の人が来ない→お客さんが濃いめの古本好き中心に→新刊書店で買える本が中心のウチの箱はまず売れない。

という判断にいたる。売上は気にしないと言いつつ参加費くらいは売り上げたいし、金額うんぬんを抜いても、売れないというのは心がさびしい。

というわけで、「今回は全部ちゃんと内容メモつけて、愛情のある箱にしよっ」という決意はもろくも敗れ去り、近所のBOと古本屋での仕入れに前日になっておもむくハメになりました。

読んだことのない本で、古本好きウケしそうな本で、売れ残ったら自分で読むからいいやと思える本という基準で9冊ほど購入。さらに、「あ、業界関係の本は売れるからいれとこー」と思い立って「ブックストアウォーズ」「新世紀書店」を追加。「そういや、寺山の文庫は新装しちゃったから林静一とか、宇野亜吉良が挿画のやつは売れるんじゃない?」「あ、だぶってる米原万里もいれちゃおー」ということで、結局「うちにある余った本積めました」な箱に。ダメだこりゃあ…。

ぎりぎりまで帯を作ってから、弟を荷物持ちに連れて出発。

懸念していた雨は9時頃にはすっかりやんでおり、6箱が大家のコシヅカハムさんのところに並びました。

コシヅカハムさんはどうやら地元の方にとても愛されているお肉屋さんのようで、12時頃になるとご近所の方々がぞくぞくとコロッケなどお総菜を買いにみえていました。12時過ぎたころから古本市目当てのお客様が増え始め、うちの地味な箱の本もぽつぽつ売れ始めました。

ところで、同人誌発行がついえてから、急遽設定された今回の目標は、児童文庫を売ることでした。

「若おかみは小学生!」「黒魔女さんが通る!」「7時間目のUFO研究」「花をうかべて」の4点。ほんとうは「妖界ナビ・ルナ」も持っていく予定だったのですが、掘り起こせずに断念しました。通りすがりの小学生が買ってくれたらイイナアと思って置いていたのですが、実際には通りすがる小学生みんな「持ってる」「読んだことある」とのリアクション。売れません。

「うーん売れてほしいなあ」と思いつつあまりの手にとってくださる方の少なさに「もう実売を考えて寺山の文庫並べようか」と考えていたところ、ベルサイユのばらマーガレット版単行本全10巻状態悪し800円を600円に値切って買ってくださった方が、青い鳥文庫3点400円に値切ってお子様のために買ってくださいました。

しかし、話をよく聞くとお子さん高校生だと…。(児童文庫の対象年齢は小学校2~4年生くらいのことが多い)

私「あ…あの…!たしかにすっごくいい本だし、私もおすすめしましたけどバッテリーとか読んでる高校生にとって面白いかはちょっと自信ないんですが…。大丈夫ですか?」

お客様「大丈夫~!うちの子ルビがふってないと読めないような子だし~」

剛胆な方でした。本当に大丈夫だったのかちょっと不安。しかし、本は里子に出た!よかったよかった。

ちなみに途中から出した寺山はざくざく売れました。さすが。

前回前々回とほとんど本を見に行けなかったので、今回は弟に1時間半ほど店番を任せていくつかの大家さんを回りました。

前回前々回で知り合った方々にごあいさつできてヨカッタ。それから麻雀マンガ好きのみかん箱さんとお知り合いになれてこれまたヨカッタ。コシヅカハムさんは谷中の町中の大家さんだったので、谷根千という土地をよく見ることができてこれまた刺激になりました。下町がきちんと生きている土地って憧れるなあ。

売上は過去2回と同じくらい1万数千円でした。過去2回と比べてバッグ不要の人が増えたように感じました。みなさん袋を新しくもらわないクセがついてきてるのかな。マンガ関係の本を増やしたライトな箱にしたためか否か、例年以上に私の箱で本を買ってくださる方は私と同じような20代地味目メガネ女子が多かったです。

打ち上げ参加したら何の因果か谷根千賞をいただいてしまいました。

選んでくださったのは、谷根千スタッフの山崎さんでした。「日本×画展図録・手ぬぐい付」と「変人偏屈列伝」を買ってくださった方でした。楽しくお話しさせていただいたあの人はそういう立場の方だったのかー!とあとでビックリ。

受賞理由は「帯のおすすめコメントに、本への愛情を感じた」「一箱のサイズを守っていた」でした。頂いてから言うのもなんですが、私の箱はさほど目新しい工夫があったわけでも、個性的な品揃えだったわけでもないので、他の箱と違う点があるとすれば箱から本がはみ出していなかったことにつきると思います。実は過去2回の参加の際は私もハンカチひいてフリマ方式で売ったりしていたので…。ただ、今回は準備段階でいろいろ頓挫していたのでなんとなく殊勝な気持ちで箱から出ないように心がけていたのでした。

ともかく嬉しかったです。本を買ってくださった方、スタッフの方々ありがとうございました!

ちなみに直前に仕入れた9冊中6冊売れました。業界関係本も売れました。よしよし。

追記

頂いた賞状“YANESENとは全国で初の屋根と栓の専門店です。~”という大嘘がつらつら書いてあった…。そしてそれを読んだ弟が「へえーーいろんな雑誌があるんだね」と、まんまとだまされていた。っていうか休刊してしまうんですか…。ショック…!

Yanesensyou Yanesensyounaka

あっそうだ私は見られなかったのですが、談志がいたらしいです。弟が「業が深そうな人だった」と言ってました。

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2008年4月30日 (水)

大阪の児童文学館存続の署名お願

メルマガ児童書評からコピー

〔児童文学書評〕 <http://www.hico.jp
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



☆すでに各マスメディアの報道でご存じの方も多いと思いますが、児童文学館が存続の危機にあります。 ここには現在、府の予算でだけではなく、一般の方、出版社、作家、研究者たちの寄贈によって四半世紀の年月をかけ、七十万点もの資料が集積されています。
 資料館は、継続的に資料を集めていかないと、その価値はなくなります。一度廃止してしまうと、容易には元に戻すことができないのです。
 児童文学館に集められている資料は、雑誌の付録など、意識的に残していかないと散逸しやすい物も多く、とても貴重です。専門員による継続的な管理・保存が必要と考えています。

 子どもの物語たちの記憶が失われてしまはないように、存続願いの署名運動を行っています。お一人様からでも、よろしくおねがいいたします。
 ご協力いただければ幸いです。
 
 署名用紙は、「児童文学書評」http://www.hico.jp/に置いています。 発送はFAXでもかまいません(手書きでお願いします)。五月九日をめどに、020-4665-3160まで、お送り下さい。(ひこ・田中)

 本編は、また改めて配送いたします。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【児童文学評論】                     お願い号

こいつはおおごとだ!私も友人知人を頼って数集めます。大阪の人たちがなぜ橋下を選んだのかは本当に理解に苦しむなー。

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2008年4月 3日 (木)

「白土三平論」

すさまじいおもしろさ。うっかり歩きながら読んでしまった。

白土三平が政治的な存在であった時代のことや、カムイ伝以降の作品のこと、途中からネームと下書きを主な仕事とし、ペン入れは他の作家に任せていたことなど、分析以前の事実だけでも強烈に刺激的だった。

四方田犬彦の分析、特にほとんど省みられない後期作品の分析も面白かった。四方田の分析が必ずしも作品の真をついているわけではないのだろうけど、こちらの卑近な読みではたどり着けない深度を作家が獲得していることもあるのかと思ったり。

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2008年3月29日 (土)

「800番への旅」

お利口さんの少年マクシミリアンが、離婚済みの父親と、母親が再婚相手と旅行に行っている間だけ同居するところからはじまります。

マクシミリアンは、ラクダを連れての巡業を続ける父を煙たがっていますが、次第に父と父を愛する人々にうちとけてくるようになります。

よくあるパターンですが、この作品の面白いところは、途中で出会う出会うサブリナという少女と彼女が繰り返す「ふりをする」という言葉です。サブリナは規格外れと称して、事故で腕を切断した少女や、シャム双生児に関する記事を集めている女の子。

「どんな人だって、ふりはしているものなのよ」という思想の彼女は、マクシミリアンの行く先々に登場します。

物語半ばで、彼女とその母がどうやら行く先々のパーティー会場にもぐりこみ、ささやかに宴会に加わっているらしいことがわかってきます。

しかし、サブリナは臆することもなく「ふり」を続けます。

通常、何かの「ふり」をすることはよくないこととされていますが、この作品ではサブリナのあつかましくも堂々とした態度と、ラストのしかけがふりをすることの多様さを考えさせる作りになっています。

また、キャンピングカーで暮らす家族や、名門校の様子など、アメリカの風俗が細かに描かれていて地味ながら読み応えのある作品になっています。

追記

商品リンク貼ろうと思って見てみたら、この作品誤訳が非常に多いとのこと。熱心な読者の方が岩波にかけあって、改訳されたそうです。

普段はあまり翻訳を意識しないのですが、たしかに繊細な物語の場合は、訳者のミスリードで作品が大きく変わってしまいますね。「魔女ジェニファとわたし」も翻訳家の読みがカニグズバーグの意図と正反対なのではないかと、赤木かん子が指摘していましたが。

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2008年3月 8日 (土)

「死刑」

死刑制度の存続廃止について性急な返答は出来ないけれど、この本を読んで感じた抽象的な疑問を一つとりあえず書き留めておく。

死刑は社会制度を維持するため、凶悪犯罪の抑止のため、遺族感情を尊重するための制度だと言うけど、それならフィブリノゲン製剤を放置した旧ミドリ十字などの方が死刑という制度にふさわしいんじゃないか。

死刑が果たして極刑にふさわしいのかどうかはともかく、人が人を裁くことの曖昧さを考えると、「あると何となく安心できるけど、細かいこと考えるとめんどくさそうだし、おれは死刑にされるようなことないだろうからとりあえず存続でよくね?」みたいなノリで支持されてるであろう制度にあんまり諸手をあげての賛成はしたくないな…。

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2008年2月13日 (水)

「文化系トークラジオLife」

引きこもり姉弟が普段から愚痴っているようなことがきれいに活字にしてあってちょっとどきどき。とりあえず本文メモ。

「戦争」っていうものが、「怖い」ものから「悲惨」で「可哀想」なものに変わっている気がします。

・実体験を聞いても戦争がリアルに感じられないとしたら、バーチャルなものをバーチャルに破壊することでしか〈リアル〉を感じられないんじゃないかと

・そういえば福祉みたいな世界に入りたい若者が増えてませんか

・でも、自己表明することと意識、問題関心を持ってることはまた違う問題だと思う。(引用者注・ホワイトバンドに関して)

・だって彼らは“何か”を求めてるわけじゃないですか。問題はその“何か”じゃなくて“求める”って動詞の方だと思うんです。(引用者注・ピースウォークやサウンドデモの参加者に対して)

ラジオという性質上、議論はあまり煮詰まってませんが、その分いい大人がワイワイと即興で盛り上がっていく様が生々しい。面白いです。

本田由紀が「もう、お前らみんな喧嘩売ってんのかっ!」と叫ぶ「働くということ」。森山裕之が「あだち充原理主義」、津田大介が「ワセジョ原理主義」を標榜する「憧れの女性」などなど。鈴木謙介が「ロストジェネレーション」の回でマジギレする様子は26歳もうすぐ27歳にはけっこうじーんとくるものがあった。理解してもらったことに充足していたらだめだけどね。鈴木謙介がチャーリーと呼ばれているのにはちょっと笑った。

本文中にもありますが、部室でのおしゃべりを思い出させる感じの本。

参考に下にパーソナリティーの仕事を貼っておきます。(1冊ずつでごめんなさい…!)「あ、この本好きだ」「読みたかったんだ」という方なら楽しく読める気がします。

編集者の方の仕事

斎藤哲也

柳瀬博一

森山裕之

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2008年2月11日 (月)

週間ブックレビュー

しばらく更新停止してしまったけど、「忘年会シーズンすぎたから今日からまたダイエットするんだから!」とか言い出す女子のように再挑戦!

松谷みよ子さんがゲストで出演された回の「週間ブックレビュー」が録画されていたので久々に観ました。

いやー!あれ観るとほんとに面白い本がいっぱいあるんだなと思いますね。

本屋勤めの時に、時々「週間ブックレビュー」で紹介されていた本を問い合わせ受けることがあって、マイナー番組なのに打率が高いなと思っていたんですが、これだけ本が出ている今、本好き受けしそうな本ばかりを取り上げてくれる番組はやっぱり重宝ですね。ここが面白いっていうのを直接的な言葉で言ってくれるのも面白いし。もっとも、問い合わせ率が高かったのは「本屋に置いていない本が多い」「どこに置かれているのかわかりにくい本が多い」からだったのかもしれませんが。

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2008年2月 1日 (金)

私立の子は発売日に本を買う

毎日更新ってどの口が…。

昨日は中央線車内で、森見登志彦の「有頂天家族」を読んでいる私立所学校小学生を見た。6年生くらいか?となりに座っていた友人のこれまた小学生は「空想歴史読本」を読んでいた。

すごいな小学生。「それ面白い…?」とか聞きたくなった。あ、でも私も小学校6年生の時に椎名誠の「かつおぶしの時代なのだ」「赤目評論」とか読んでたか。「赤目評論」というタイトルだけ見て「お前こんな難しい本読んでるの!」と驚いた同級生がいたのを思い出した。中身は昔の椎名調のエッセイにすぎなかったんだが。それにしても私立小学校の生徒とか、発売日に児童文庫の新刊持ってたりして驚く。

つまり、本(=教育)にお金をかけるのを親がためらわない環境にあるのね。私が小さい頃は特別なときでないと本買ってもらえなかったのに…うらやましい。格差を妙なところで実感。

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2008年1月29日 (火)

PR誌

いわゆる出版社のPR誌をいちばん重宝がっているのは実は営業じゃないでしょうか。

もちろん「波」や「青春と読書」を毎号必ず手に入れているおじいさんおばあさんも基本読者層かと思いますが。

読む本忘れた時や、持ってきたはいいけどなんだか読む気が起きない時など、短い書評やエッセイがたくさん載っているPR誌は、たとえ御用雑誌でもけっこう楽しい。

個人的に楽しんで読んでいるのはひこ・田中が連載している光文社の「本が好き!」と、わりと内容が若々しいポプラ社の「asta」。小学館の「きらら」もそうですが、後進の雑誌の方が連載と呼べるものが多くて楽しい気がするな。

ちなみに、今まで読んだPR誌の中でもっとも実験的で読み応えがあったのはアスペクトの「アスペクト」でした。特集タイトルが“「泣ける本」で泣いてたまるか!(いい大人が)”だったり。タイトル忘れたけど、書籍の新聞広告は本当に効果があるのか調査とか面白かったなー。最近みないけどもう作ってないのかな。

ところで、PR誌のおかげで山本幸久のおもしろさを知りました。いや、山本幸久って本の雑誌ウケしそうなソツのない安全なイメージがあって、逆に読まなくていいやって気になっていたんですよ。

しかし、「きらら」で「恋ヶ窪兄弟」を、「青春と読書」で「GO!GO!アリゲーターズ」を読んでいつのまにか熱心な読者に。実際安全な話なんだけど、文章のひょうひょうとした部分が味があっていいです。意外な出会いをくれる、PR誌もバカにできないなと思いました。

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2008年1月22日 (火)

「シゴフミ」

毎日更新とか言ってさっそく行き詰まる。むっ無理矢理更新!

ええっと、このあいだ「シゴフミ」っていうアニメを見たんですよ。死者が生者に託した手紙=シゴフミを可愛い女の子が運んできてくれるっていう設定のライトノベル原作アニメ。

けっこう演出がよくてなるほどと思いながら見ていたんですが、ラストが衝撃展開。以下ネタバレのため白抜き。

廃ビルでロケット作りに奔走する男の子と、それを見守る女の子。ある日、男の子の元に届いたシゴフミ。そこには、彼女が実の父親を殺したと書いてあった。女の子に正否をたしかめようとする男の子だが、女の子に殺されてしまう。彼女は実はろくでなしの父親にAV女優をやらされており、幼い妹すら金儲けに利用しようとする父親を思いあまって殺してしまっていたのだ。逃げ回る女の子は、今度は男の子からのシゴフミを受け取る。そこには「気づいてやれなくてゴメンね」という趣旨の手紙が。男の子が作っていたロケットの発射台を目指し、廃ビルへ走る女の子。そして、ロケット発射の成功とともに、動揺していた刑事に撃たれて死んでしまう。空を見上げる女の子。そして、女の子の妹の元にシゴフミが届いてエンド。

何が衝撃ってあまりにも「戦時下のおたく」の言うとおりだったことがですよ。まんま引用で申し訳ないが、

女性をセクシャルな欲求の対象としてとらえるだけではなく、彼女らが持っている「内面」という物語に目を向けはじめた結果、男性はそのようなものを踏みにじりかねない自分の欲情(暴力)を自覚せざるをえなくなり、そこで改めて女性をいう他者と向き合うことになったという歴史がある。

しかし、そんな彼女の内面を理解しようとした結果、団塊の世代以降のある男性たちは、「彼女をわかってあげられる僕」という新しい特権的な立場を発見し、そこを新たな居場所としていったのだ。

「戦時下のおたく」p23~24 ササキバラ・ゴウ「おたくのロマンティシズムと転向」より。

あまりにも当てはまりすぎ!痛みの重さは追求しないで、「許してあげる僕」と「事故死」で、傷ついた少女の問題を棚上げするって、それは人としてどうかと。というか、単行本化の段階で、アニメ化の段階でなんでだれもつっこまなかったんだ…。それてもアニメと原作はストーリー違うんだろうか…。

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2008年1月18日 (金)

「女性の品格」

昨年度NO1ベストセラー「女性の品格」は、一言で表現すると「空気読め」ということを事細かに語っている本でした。さほど発見のある内容ではなかったし、むしろその保守的な言説にあてられて読んでいると意気消沈してしまう本だったので、何となくケッと敵視していたのですが、この間あるフリーペーパーを読んで猛省。

吉祥寺のブックスルーエが出している「ルーエの伝言vol.13」収録の

書店員座談会のコーナーから

「『女性の品格』板東真理子(PHP新書)画期的だった気する。おじさんのものだった新書をおばさんにも認知させたから」

「うん、若い人も買ってた」

そうかあ! そういう視点で見るとすさまじく歴史的な本だ。実際便乗商法の「親の品格」を、電車で読んでいる中年女性がいたし。やっぱり現場の人には負けるなと思った瞬間でした。

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2008年1月17日 (木)

「制服男子」

制服男子という本が出ていたので、ぱらぱらめくってみた。飼育員からコックまで、様々な制服男子を写真や図解付きで楽しむというフェティッシュな本だ。図版にマンガからの引用が多くて「やっぱりなあ」という気分になる。中に収録されている短いマンガにちょっと驚かされた。主人公がレズビアンの女の子なのだ。つまり、この本は「制服男子を“観賞”して遊ぶ」のが主眼であって、「制服男子とどうこうしたい」という欲望についての本ではないんだろうな。独特の距離感がマンガにも反映されているように感じた。

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2008年1月12日 (土)

ひさびさに更新…

何ヶ月放置していただろうかと思い久々にのぞいてみたらせいぜい一ヶ月ちょっとだった。

まだ読んでいないけど、期待している本。こちらのサイトで紹介されていたので

児童書の自然科学の本は実はかなり面白い。これとかこれも。あんまり注目されることのない分野だけど見応えのある本が多い。まとめてくれる本があったなんてさすが赤木かん子。

関係ないですが深夜にやっているカイジアニメのおかげで福本伸行にいまさら大ハマリ。黒沢と涯はなんとなく見てて「すごく面白いマンガ描く人だなー」と思ってたけどカイジおもしろすぎる!基本的に荒唐無稽なんだけれど、その荒唐無稽さを信じさせて没入させてしまう技量と、過剰なまでの人間賛歌が爽快。今時「人間が希望そのものだったんだ」とか「それでも人間かっ……」というセリフを見られるとは思わなかったし、それに見合うだけの出来事を描ける人がいるとも思ってなかった。マンガというジャンルの底力が見られる作品でした。それにしても佐原とカイジが最後の方すさまじくやおい(↓の意味ね)で驚愕でした。ほんとに「こっ、これ以上純化されたやおいは存在するのか」と思った。マンガってほんとうにあなどれないですね。

なぜこんなことを書いているのかというと、赤木を入力する際に真っ先にアカギに変換されたからなのです。

>「ライバルだけど認め合ってる関係。男女関係なく、見た目仲良くないんだけど、お互いの力を認め合ってて、それでその人が本当に困ったときには手をかしてやるような関係みたいなものを、私らはやおいと呼んでいて。」

よしながふみ×羽海野チカ対談のよしながふみの発言から。「あのひととここだけのおしゃべり」に収録。

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2007年12月 4日 (火)

「怪人オヨヨ大統領」

スラップスティックなんだということはハーポとチコというかのマルクス兄弟から採った名前からもわかるわけですが。

極端な行動の登場人物に似合わぬ淡々とした語り口が奇妙な味わいをかもしていて印象的でした。

例えば、タクシーの運転手が、高速道路でまえの車の上をとびこえるという場面。

「ですから、車だって、まえの車のうしろにくっついて走るんじゃなくて、上をとびこえればいいわけですよ。一つだけじゃなくて、ぴょん、ぴょん、こえれば早く進めるんです」

「そういうことが可能ならばな」

「可能だから、言ってるんです。……やってみましょうか」

あたしたちののった車は、いきなり、まえを走る外車によじ登って、すべりおりた。

「なにをする!」という声がうしろで聞こえた。

「これで、羽田まで行けば、意外に、早く着くわけですよ」

「きみは天才だ!」

グルニヨンが叫ぶ。

「そう、ぼくは天才!天才なんだ!」

青年は目をギラギラさせて、両手をあげた。アブナいひとだ。

文字で落語を読んでいるような感じでした。小林まことがマンガ化したら面白いかも。佐々木マキの挿絵が面白い。描線のへろへろした感じに似合わないシャープな感じがいいですね。

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2007年12月 1日 (土)

「秘密のオルゴール」

秘密のオルゴール

いつみはある日死んだ祖母の家で出会った猫が、血だらけになって倒れているのを見つけます。いつの間にか家に置くことになったその猫が、実は二本足で立ち、人と話せることに気付きます。一方、街では子供の行方不明事件が相次いでいました。友人の莉々が行方不明になったのを知ったいつみは、猫のムスビと莉々を探しだそうとします。

妖界ナビ・ルナの池田美代子の作です。ナビ・ルナより年齢層が高めのため、扱う人間関係も複雑になっています。

出色なのは能力者であることでまわりに不思議ちゃん扱いされる玉之屋さんの描写です。彼女はどうやら予知能力があるようなのですが、悪い予知を同級生に公言したことで、「人気とりのためのサギ師」という汚名をもらうことになってしまいます。このへんの描写がやけにリアル。気は強いけど心は優しい莉々が、玉之屋さんを罵倒する場面が妙にいきいきしてます。「玉之屋さんはわるい子じゃないよ」といういつみのセリフに「うそつきが、わるい子じゃないのかなあ」という反応を返すところがよいです。

ガラスのオルゴールという美しいモチーフや、それに似合わぬ気味の悪いしかけも面白い。

ありがちといえばありがちだし、退屈な部分もあるのですが、どこか気になって仕方ないザリッとした部分を持つ作家だと思います。

あと、猫の絵と描写がかわいい。ミルクティー色の毛並みってときめく…!!

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2007年11月26日 (月)

「妖界ナビ・ルナ①」

 主人公ルナは心優しく誠実な子。そして孤児。両親は陰陽師と妖怪。伝説の子だと言うことが判明したので、仲間の妖怪を世界を守るため頑張る。

 という設定だけ聞くとすさまじくベタですが、血の描写がやたら生々しかったり、友人が妖怪に傷つけられたところを見てしまった子供がしっかりトラウマを抱えていたりと、ヤケに生々しい。根暗な匂いに引きつけられる物があります。表紙の画よりかなりハードな内容。頑張って続きも読んでみるか…。

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2007年10月31日 (水)

「はんぴらり!」

 おばあちゃんの家に居着いていた半人前の神様の鈴音丸が、お人好しの武君と一緒に成長していくお話です。

 児童文学の主人公の基本に「友達になりたいと思える人物であるかどうか」(もちろん例外あり)があるのかと思うのですが、そういう意味ではいい本なのでは。ただし同世代の男の子が鈴音丸と友達になりたいと思うかはちょっと謎。というかイラッとくるのか共感するのかが想像つかない。しかも武もやたらいい子だし。でも女の子だったらかなりの確率ではまりそうです。2巻の帯は「鈴音丸かわいーと大評判!」だし。

 それにしても印象に残るのは、鈴音丸の涙を溜めるためにあるようなでかい目です。ジャケと中身のはまり具合がはんぱない…!

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2007年10月 9日 (火)

「はらぺこねこ」「ジャイアント・ジャム・サンド」

「はらぺこねこ」

 すさまじく大喰らいの猫が飼い主の百姓やら通りすがりの動物やらを次々に食べてしまう…。発想自体にはさほど驚かなかったけど、熊だの太陽だのありえないような巨大なものまで食べてしまうというスケールのでかさには驚きました。スズキコージの絵がいっぱい食べて体のふくらんだ猫をむくむく描いていて迫力あり。でも、太陽にすら勝ってしまった猫を倒すのが○○というのはなぜ。北欧神話だから?

「ジャイアント・ジャム・サンド」

街にある日大量の蜂がやってきた。やりたい放題の蜂のためにゆっくり歩くこともできない人々は、あることを思いつく。タイトルとここまでの解説でオチは見えると思いますが。蜂退治の場面のシュールな絵のおかしさが魅力的。

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2007年5月 7日 (月)

やおいなら名作?「あらしのよるに」

 ところで「あらしのよるに」をご存じでしょうか。

 それまでは地味なしかけ絵本で、地味にヒットを出していた木村裕一が、元旭川動物園飼育係で、動物の画に定評のあるあべ弘士と組んでつくった幼年童話です。狼と山羊が、種族間の壁を越えて仲良くなるというこの話は、2006年に映画化され、児童書としては異例の大ヒット作となりました。1994年の刊行から12年かけて、2006年に第7巻をもって完結しています。

 児童書業界はときどき大ヒット作を輩出しますが、そのさいの必要条件に「逆らえない種類の正しさが書いてあること」があげられます。たとえば「星の王子さま」の「ほんとうにたいせつなものはめにみえない」という言葉。たしかに「めにみえないもの」は「めにみえるもの」と違ってその価値に順位をつけることができないから、それを「ほんとうにたいせつ」と言いかえるのは簡単ですし、逆らいようがありません。

 「モモ」や「バッテリー」も同様かと思いますが、大人に受ける児童書は多くの場合「逆らえない種類の正しさで、不条理な世の中にわかりやすい答えを出してほしい」という大人の要請に答えることによって、ヒット作になります。作品自体に罪はないのですが、大人たちが安っぽい正しさの共有のために児童書を利用しているのをみると、ほんとうにうんざりします。

 さて、「あらしのよるに」もご多分に漏れず。山羊と狼が仲良くなるという異種間交流は、多くの大人達の心をとらえました。

人も含めて敵対するもの同志の友情は、悲劇的な結末を迎えることが多いようです。しかし問題解決への努力は決して無駄ではありません。 -よこはま動物園長増井光子

-オオカミとヤギは、グリム童話以来の因縁の中にある。そんな二匹の愛はあるのか?野生の掟を超えたスリリングな愛は、せつないねえ。一緒にいるだけで幸せだという愛はいとしいねえ。-山本容子

-ガブとメイのつむぐ物語は、人間世界の住人に、大切のコトを気づかせてくれる。誰かを想う気持ちが、どれほど尊いかを。そして、自分の心をやがて暖めることを。- 草野満代

 と大絶賛の嵐です。たしかに、第1巻「あらしのよるに」の時点では、根本的に異なるもの同士の交流が、あべ弘士の実在感のある画によって描き出されていました。しかし、シリーズが続くにつれて話が混乱。最終的には二匹は互いの種族から逃げ出し、山の向こうへ逃避行してしまいます。異種間交流どころではなく、ただのかけおちモノになってしまいました。実際、映画公開時に書かれた小説版では、山羊が女性になっていましたし、著者自身、二匹の関係を恋愛に見立てて「あらしのよるにの恋愛論」という本を出版していました。

 私は、児童書としてはこの作品をまったく評価できません。(1作目のみならともかく)山羊も狼も互いの属する共同体になんら抗うことなく、桃源郷に逃げ出してしまったように見えるからです。もし、この作品のテーマが異種間交流であるなら、彼等は属する共同体と戦い続けながらコミュニケーションをとらなくてはいけないのに。木村裕一は悪ノリのし過ぎで作品の価値を落としたと思います。

 しかし、ここに新たな評価軸を発見しました。

 映画「あらしのよるに」は、あの杉井ギサブロー監督がとことん原作に忠実に作った結果、素直に鑑賞するとラブストーリーにしか見えない出来になっているのですが、マンガ評論家で現在「一日一やおい」というブログを稼働中の吉本たいまつさんが、やおい映画として「あらしのよるに」に非常に高い評価を下していたのです。

 この映画は登場人物が動物になっていますが、やおい作品の構造をきちんと備えているように思えました。(中略)狩るものと狩られるものという自然の摂理があるわけですから、二人の障害はより大きくなるわけです。これは「男どうしなのに」というやおい作品の前提と共通していますね。 (中略)

 二人の強い思いが、障害を乗り越えていくのですね。そして二人は命がけで二人の関係を守ろうとします。命までかけるなんて! うひょー!

 そうか! やおいだと思って開き直ればいいんだ…?

 いや、私は相変わらず好きではないですが、評価の軸を変えると、作品の価値も変わるということをしみじみ思ったわけです。

 小説版はたしかほんとに心中してたはずだ。すっごくうんざりしたなあ。

 右が原作。あべ弘士の絵がリアリティあってイイ!っていうのが初期の評価だった気がする。

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2007年5月 5日 (土)

2007年春の一箱古本市

 2006年秋に引き続いて参加させて頂きました。でも、今回は生活に追われていたのと(金銭的な意味で)、軽うつぎみだったのかぼーっとしていたことのダブルパンチで前日準備が超適当になってしまい、結局ウチにある本を手当たり次第つっこんだというかなり下品な店づくりになっておりました。なんでも売りたがるからさあ…。棚にノイズが多いんだよ…。まわりの皆様のすきっとした箱作りを見て至極反省。あと売上げどうこう言い過ぎな。運営を支えてくださる助っ人の方々や、場所を貸してくださって地域の皆様に失礼。

 そういうわけで、今回は自分の箱についてはあまり語ることもないのですが、いろんな人と会話することで本を売れたのが楽しかった! 

 たとえば「千利休-無言の前衛」(赤瀬川原平)岩波新書。「赤瀬川さんは映画の利休の台本書いてたんですよ」っていうことで興味を持ってもらえたり。

 「スピーチ・バルーン・パレード」(米沢嘉博)河出書房新社を、「これ、少女マンガ家のインタビュー集なんですけど、珍しく全員分顔写真が載ってるんですよ~」とおすすめしたら、「笑わない人魚」(今市子)あおば出版、「堤中納言物語」(坂田靖子)中央公論文庫と一緒に買ってくださったり。値付けも中身のグレードも下がった今回のほうが売上げが上がったのは押し売りのおかげか?!

「徒然草/嵐山光三郎・方丈記/三木卓」訳の講談社少年少女古典文学館が、「探してた本でしたわ」って言ってくれたおじいさまに売れたのとか、「石ノ森章太郎のマンガ家入門」秋田文庫が、古本市にはさして興味のなさそうなつつじ祭り帰りのおじいさまに「お、なつかしー」って言ってもらって売れたのがうれしかったぜーい!

 反面がっかりしたのが、マンガ少年版「アンドロメダ・ストーリーズ」(竹宮惠子)朝日ソノラマが売れ残ったこと。「地球へ…」がアニメ化されているし、今新刊では手に入らないから読みたがる人いるはず、と思ったんだけど、手にとられる方はたくさんいましたが売れませんでした。なんか、竹宮惠子好きなもんだから理不尽に悔しい気分でした。

 あと、前回の市で、某書店のアルバイトの方とお友達になったのですが、その方の同僚が退屈男さんだったとのことで、わざわざ声かけてくれました。びっくりして変な反応返してしまいました、あと見応え無い箱で二重にすまんでした。リンク集作りやもろもろのこと、お疲れ様&ありがとうございますです。

 さて、今回は弟を店主代行にして、いろいろ回ろうと思っていたのですが売るのが楽しくて売り場を離れたくないっていう意外な方向に! ただ、前回お隣になった古本遊歩さんが、ご近所のオヨヨ書林前出店市川糂汰堂さんに間借りしてるというのでオヨヨ書林前と、「乙女のためのマンガ道」をテーマに箱作りしているというくちぶえブックセンターさんと、これまた前回お隣だったビオラ書房さんの箱は見たいなと思っていたので、(しかし出店場所は調べず…。いけばわかると思ってた)とりあえずオヨヨ書林前に向かいました。

 オヨヨ書林前、なんか新刊の良書話題書が固まって入ってるすごいお買い得感高い箱があるなあと思って、「今出てる本をちゃんと読んでる感じですねー」とえらそうなことを言ったら某大型新刊書店の書店員さんでした。だからTシャツがウミノクマクラウザーなのかっ! 屋号確認してなかったけど、たしかカケコ屋さんのはず。「嫌オタク流」と「戦時下のおたく」を購入。そして、その後ウチの箱で「少林サッカー読本」ぴあを買っていただきました。ちょっと押し売り気味のとこを快く(?)買ってくださってありがとうです。

 さて、地図を持ってもりもり歩いていたのですが、道が入り組んでいて目印になる施設の少ない谷根千。自然に発展してきた下町っぽくて、区画整理された都会に住んでる身としてはうらやましいのですが、暑さと疲労と妙なハイテンションに浮かされた脳みそには目的地がわかりづらい。全箱まわるつもりだったのに、結局しのばずくん神社であがりーにしてしまいました。

 しのばずくん神社にお参りして、くちぶえブックセンターさんで「うーん、半分くらいうちの本棚にありますね」というこれまたえらそうなセリフを吐いて、「エマ8巻」(森薫)エンターブレイン、「はつこいの死霊」(草間さかえ)東京漫画社、「コンクリート・ガーデン」(寿たらこ)ビブロスを購入。こちらの箱には、中に感想つきカードの入ってる本とそうでない本があったので、感想カードの入ってるのを選びました。BLって種類が多すぎて手を出しづらいので、こういう出逢いもいいかなと。あ、書かないとわかんないか。東京漫画社とビブロス(倒産済み)はBL主導の版元なのですよ。

 しかし、ふだん営業でそれなりに頭下げてるせいか、この日の私は妙に態度がえらそうで後から思い返すと恥ずかしい。躁病かい。

 戻って店番に徹していたら、古本遊歩のコウノさんが寄ってくださいました。相変わらず元気そうで嬉しいです。やっと他の同じ根津教会店主の方々の箱を見る余裕が出来ました。

 えーと、私の右隣では往来堂賞受賞のぐるぐる堂さんが、切って使えるスリップ&しおりというのを作ってらっしゃっいました。中国の図鑑かなんかの画を写したってお話だったっけ? ポストカードくらいの大きさの紙が、真ん中で切り離して一方をしおりに、一方をスリップにできるようにつくられてる粋な構造。結局本買ってないのにお隣のよしみでいただいちまったい…。それから「ゆず虎嘯」さんのところで「味のある旅」(おおば比呂司)を購入。最初は同じ著者の「和蘭生活ノート」っていうのを買ったんだけど、なんかぐるぐる堂さんと交換。なんかぐるぐる堂さんのほうがおおば比呂司さんを愛しているみたいだったんで、ちょっと恐縮。四谷書房さんの箱は面白そうな本で一杯だったんだけど、なんか買ってるときりがなさそうな感じだったので手が出ませんでした…。貧乏は情けない。左隣のヨナ屋さんは、ゆうきまさみ、能楽書、キリスト教の本といろいろ不思議な品揃えで面白かったです。「牧師の本」とか「ラストブックマン」とか見たかったんだけど、忙しさに紛れて買いそびれました。両替、その他諸々のお気遣いありがとうございました。

 根津教会出店者は大家さんの根津教会さんから机や椅子や日傘をお借りするという、非常に恵まれた環境で営業させて頂きました。最後にお茶までいただいてほんとうにお世話になりました。

 それから、企画者の皆様、助っ人の皆様、店主の皆様、お客様、ほんとうにありがとうございました。次回参加の機会がありましたら、今度こそ編集された箱を作ります…。次はロシア箱とか!

 そいでは長文失礼。

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2007年4月29日 (日)

「二人会~大島妙子+工藤ノリコ原画展」

 眠いとゆーのに「大島妙子+工藤ノリコ 二人会」の感想を書いていたのに、消えちゃったよ! くそう。

 消えてしまった丁寧な文章を再現する元気がないので、ざっくばらんに感想を。えー大島さんったら、「ジローとぼく」偕成社「猫吉一家物語」(金の星社)で有名な、動物描きさんです。今回の展示は「わらっちゃった」(小学館)の原画中心だったんですが、個人的に心をつかんだのは「ブチョロビッチョロはどこ?」(学習研究社)でした。遠慮のできない女の子の家で難儀する猫が主人公なんですが、そいつ名前がブチョロビッチョロってんです。変だよなあ。かまわれすぎてうんざりするブチョロビッチョロの毛の逆立ち具合がいい味出してました。ブラシかけるとかいう繊細さとは無縁なのが、絵から伝わってくる。

 工藤ノリコさんは、「マルガリータとかいぞく船」(あかね書房)の展示だったんですが、個人的にうれしかったのが「寿限無」(ほるぷ出版)の新作があったこと。ほるぷの「寿限無」は、ふつうの絵本と違って、右ページに言葉、左ページに絵が描いてあるというつくり。たとえば、海砂利水魚って言葉が右ページにある場合は、左ページに海に潜って魚たちと出会う少年が描かれるって具合に、言葉の意味を絵で説明するような構成になってるのです。作家のアイディア力がかいま見られて面白い。あと、工藤さんピンクづかいが絶妙。

 お二人の合作なんかもあって、見応えのある展示でした。

 しかし、たかだか3,8000円の絵が買えなかった自分にがっかり。いかんなあ。

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2007年3月21日 (水)

あ~おいお顔の有袋類

 リサとガスパール&ペネロペ展

 松屋銀座祝日午後17時ということで、若いお姉さんやご夫婦でにぎわっておりました。

 リサガスはパスコのキャンペーンなどを通じて絵本に興味のない方にも認知されているので、私としてはなんとなくペネロペを推したい。

 青い肌に赤鼻のコアラというのが絵としても面白いです。服を着ようとして頭をつっかえているところや、おかあさんと買い物に行って、はぐれてしまっていろんな商店におかあさんを探しに行くところなんかなんとも愛らしい!

 それから、やはりあのしかけ絵本のおもしろさを伝えないと。岩崎書店のページに、しかけを再現したコーナーがあるからぜひぜひ「ペネロペゆきあそびをする」のしかけで遊んでください。

 ところで、グッズ売り場でのこと。

 大人の両手のひらにおさまるくらいのペネロペぬいぐるみを持った友人が